昇給の季節になると、しつこい迷信がひとりでに不安を生み出します。「収入が増えると、全収入が高い税率区分に入ってしまい、かえって手取りが減るのではないか」という恐怖です。累進課税制度はそういう仕組みではありません。実際のメカニズムを理解すれば、この不安は完全に消えます。
税率区分は収入全体ではなく「輪切り」に適用される
累進課税では、各税率はその区分の範囲内に収まる部分の収入にのみ適用されます。新しい区分に足を踏み入れた瞬間に収入全体へ適用されるわけではありません。最初の40,000に10%、次の85,000までの部分に22%が課される制度なら、90,000を稼ぐ人は、最初の40,000にだけ10%を、40,000から85,000までの部分にだけ22%を払い、最上位の部分についても同様です。90,000全体に22%(あるいはそれ以上)がかかることは決してありません。
実効税率と限界税率
限界税率とは、あなたの収入の最後の1単位にかかる税率——到達した最上位の区分の税率です。実効税率とは、総税額を総収入で割ったもので、常に限界税率より低くなります。低い区分の収入が、まずそれぞれの低い税率で課税されるからです。当サイトの所得税計算機は、この両方の数字を、区分ごとの税額とあわせて並べて表示します。
だから、昇給で損をすることはない
新しく増えた収入だけが新しい高い税率で課税されるので、たとえ新しい税率区分に入ったとしても、昇給は必ず手取りを増やします。残りの収入は、それまでとまったく同じように課税され続けるからです。「稼ぎが増えると区分が上がって手取りが減る」という恐怖はよくある誤解であり、累進課税の実際の適用方法を反映していません。