インフレは、文字どおりすべての人に影響する唯一の金融現象です。それなのに、ほとんどの人は一度もその数字を計算してみたことがありません。物価が「年に数%」上がる、と聞くと穏やかに響きます。しかし、貯蓄期と老後を合わせた数十年で複利計算してみると、まったく穏やかではないのです。
静かに進む半減
インフレ率3%では、物価はおよそ24年ごとに2倍になります。つまりモノの値段が2倍になる——言い換えれば、現金の購買力が半分になるということです。今日、引き出しにしまった1,000は、20年後には今日の価値でおよそ550分の商品しか買えません。盗まれたわけではありません。1単位も欠けずにそこにあります。ただ、買えるものが減っただけです。経済学者がインフレを「現金にかかる税金」と呼ぶのはこのためです。成長していないお金を持つすべての人から、購買力を移転させていくのです。
70の法則を使えば素早く計算できます。70をインフレ率で割ると、物価が2倍になるまでの年数が分かります。2%なら35年。5%ならわずか14年。そして10%——近年、多くの国が実際に経験した水準——では、物価はたった7年で2倍になります。
大事なのは実質リターン
インフレ率が3%のときに2%の利息が付く預金口座の実質リターンは、およそマイナス1%です。通帳の数字は増えているのに、価値は縮んでいます。預金金利、給与交渉、ローン金利、老後資金の目標額——あらゆる金融上の判断は、インフレ調整後で評価すべきです。インフレ率を下回る昇給は、礼儀正しい顔をした減給です。
これは同時に、そもそもなぜ投資をするのかという問いへの正直な答えでもあります。現金が価値を保ち続けるなら、誰も市場リスクなど取りません。現金は緊急時と近い将来の目標のためのものです。数か月の単位では安定しているからです。そして数十年の単位では危険です。目減りすることが保証されているからです。
「将来のお金」で計画する
計画で最も多い失敗は、長期の目標を今日の物価で語ってしまうことです。老後の年間収入30,000と聞けば十分に思えます。しかしそれが25年先の話で、インフレ率が3%なら、同等の金額は約62,800です。年金資産も、教育資金も、「いつか買いたい家の予算」も、すべて同じ換算が必要です。
当サイトのインフレ計算機は、この換算を双方向で行います。今日の金額が将来いくらになるのか、そして今日の現金が将来どれだけの価値になるのか——年ごとの一覧表付きで、ダウンロードもできます。複利計算機と組み合わせて、あなたの貯蓄の増加率が物価上昇に本当に勝っているかを確認してください。成長率対インフレ率。この1行の比較こそが、長期の資産形成というゲームのすべてです。
インフレについて考えるときにありがちな失敗
よくあるのは、公表される「ヘッドライン」のインフレ率が自分の支出にもそのまま当てはまると思い込むことです。住宅、医療、教育は、しばしば一般的な物価バスケットより速く値上がりしてきました。あなた個人のインフレ率は、公表される平均より高いかもしれません。
もうひとつは、固定金利の借金が持つヘッジ効果を忘れてしまうことです。正しく覚えておくべき見落としがちな事実として、固定金利の負債は実はインフレの恩恵を受けます。時間とともに価値の下がるお金で返済していくことになるからです。低金利・固定金利の借金の繰り上げ返済と投資のどちらを優先するかを考える際に、頭に入れておく価値のある、ささやかな救いです。
みっつめは、短期間の高インフレに反応して長期計画を全面的に作り替えてしまうことです。20年計画にとって、変動の激しい1年は、期間全体の平均インフレ率よりはるかに影響が小さいものです。悪い数字が1回出たからといって、取り返しのつかない決断をするのは避けましょう。